N幼稚園は 中国地方 新しい転居先は
関東地方。
とても 事前に幼稚園探しなどできませんでした。
今から 考えれば なにもまったく間をおかず とら君を 次の幼稚園を入れることはなかったのです。
N幼稚園の先生からも 「あわてて 次の幼稚園に入れないでくださいね。ゆっくり とら君にふさわしい幼稚園を 探してあげてください」 と アドバイスを受けてもいたのです。
でも 幼稚園に過大な期待をいだいていた 私は まさにウマの耳に念仏でした。
次の転居先は 50軒も入居している社宅でした。
その 社宅の知り合いの奥さんに とら君と同い年のお子さんがいたのを思い出して 電話すると お子さんはM幼稚園というところに 入園することになっているとのことでした。
更に その社宅には とら君と同い年の 子が あと4人もいて みんなM幼稚園へ行くとのこと。
私は その奥さんへ とら君も M幼稚園へ 入園させてもらえるように お伝えくださいと お願いしました。
もちろん 私も M幼稚園がどんな 方針の幼稚園かは その奥さんに聞きました。
そうしたら 「子供の個々の個性を伸ばすことに力を入れている」 ということだったので とら君向きかもしれないと思いました。
また あえて言わせていただければ N幼稚園同様 キリスト教の幼稚園だったのも ポイントになりました。
転居がすみ とら君をつれて M幼稚園に ごあいさつに行きました。
ところが M幼稚園に一歩入ったとたん とら君は 火がついたように泣き出したのです。
私は うろたえました。
うちの子たちは 自閉症ですが 初めての場所というのは わりと平気なのです。
「どうしたのだろう?」 と 思いましたが引っ越しがすんだばかりだし とら君も 精神不安定なのだろうと 無理に 自分を納得させました。
思えば とら君は なにかM幼稚園に よくないものを感じ取っていたのかもしれません。
それに気がつかなかった 私は 愚かでした。
そして 園長との面接。
はっきり言って 美辞麗句の羅列でした。
とら君の 様子をお話しても
「その程度の 発達の遅れのあるお子さん いくらでも いますよ。
私は 子供の教育50年です。
どんなお子さんでも ちゃんと お育てしますわ」
ところが その日 園から帰宅した私は おとうちゃんに こう告げたのです。
「あの 幼稚園 なんか やだ。他 探したい」
なぜ? どうして? と 思われますよね。
でも 私にも どうしてか わからないのです。
理屈ではなく 第六感とでもいうべきものが 私に M幼稚園はやめたほうがいいと告げていたのです。
実際 私は やはり近所の T幼稚園にも行ってみました。
が T幼稚園は もう定員いっぱいで 入園できないとのことでした。
ですが 私が 帰宅するとすぐ T幼稚園から 電話があり 「なにかご事情が おありのようなので… よろしかったら うちの園に こられますか」 と言ってくださったのです。
まさに 運命の分かれ道でした。
あの時 T幼稚園を選んでいたら とら君にあんなつらい日々をおくらせることも なかったものを…
おとうちゃんと私は 3日間相談し
「社宅の他の子が みんなM幼稚園に行くのに とら君だけT幼稚園に行ったら 帰宅後 一緒に遊んでもらえないかもしれない」
「私も 幼稚園が 違うと 他のおかあさんと情報交換したり 行事のとき助け合ったりできなくなる」
「M幼稚園との なかだちをしてくれた 知り合いの奥さんの顔を潰すことになる」
と 今から 考えれば 本当にくだらない理由で M幼稚園を選んでしまいました。
人生最大の痛恨事。
過去を振り返って 後悔することのない
私ですが このことだけは 時をさかのぼれるのならば…と 思います。
2002.09.08
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