とら君が 学校の授業で「命の大切さ」について 勉強することになりました。
そして 自分自身の命がどれほど望まれ
愛されてここまできたか 子どもたち自身に教えたいので 親から子どもへの手紙を書いてくださいと 先生からご依頼がありました。
実は 最初は照れくさかったのですが とら君に 私の想いが伝わるように 一生懸命想いを込めて とら君にわかりやすいことばで書いてみました。
読み返してみると 私の母としての とら君への想いが良く出ている文章だし 授業中みんなの前で読み上げられ 他の保護者のかたにも 配られるようなので ここにも載せてもいいかなと思って 書いてみました。
「とら君へ
とら君が おとうちゃんとママのところへ産まれてきてくれたのは 16年前の8月の22日 とっても暑い夏の日でした。
産まれたばかりの赤ちゃんは おサルのような顔をしていると言いますが ママにはとら君の顔が どれほどかわいらしく見えたかしれません。
とら君が 産まれてきてくれたことが うれしくてうれしくて ママは とら君を抱っこして 世界中の人に自慢して回りたいくらいでした。
とら君は 病気らしい病気もせずに大きくなってくれました。
おもちゃに 関心を向けたりするのも よその赤ちゃんより早く 輝くばかりの かわいい赤ちゃんで 知らない人からも
「かわいいですね」と言われたりして ママは本当にあの頃は 笑ってばかりいました。
最初の心配は とら君が 歩き出すのが遅いことでした。
ママはとら君を 公園に連れて行ったり 何人ものお医者さんに相談したりしました。
幸い とら君は 歩き始めて ママもほっとしましたが 今度は おしゃべりをしないことが 心配になりました。
そして とら君が二歳のときに とら君は一生おしゃべりはできないと言われました。
おとうちゃんもママもどれほど 悲しかったことでしょう。
ママは 毎日 泣きました。
泣きながらも とら君におしゃべりを教えたり とら君のおしゃべりのためにいいと思うところには 遠くてもがんばって通いました。
そのおかげが とら君は おしゃべりを始めましたが ある先生から とら君のおしゃべりは記号のようなもので とら君の心はこもっていないし とら君は 人の気持ちもわからないと言われました。
ママは ずうっと とら君の気持ちを聞きたかったです。
とら君は 幼稚園のときつらいことがあったりしたけどがんばって 小学校に入りました。
そして 一年生のとき とら君が 学校から帰ってくるのが遅いのを心配したママは
とら君を迎えにいき 途中でとら君と会って 一緒に家に帰りました。
その日 とら君が 宿題の日記に書いたことを ママは 忘れることができません。
「きょう がっこうへいきました。かえりました。ママが むかえにきました。うれしかったです」
「うれしかったです」 これは ママが始めて聞いた 読んだ とら君が自分から出してくれたとら君の気持ちでした。
ママは そのとき思いました。
とら君は おしゃべりはへただけど ちゃんととら君には とら君の気持ちがあるし
とら君 それを現すことができるんだって。
それと 同時に とら君の 「うれしかったです」は ママの心に新しい勇気をくれました。
とら君が うれしかったと思えることを もっともっとたくさん経験させてあげたいと。
あれから 十年になりますね。
とら君は ずいぶん おしゃべりが上手になって ずいぶん自分の気持ちがいえるようになりましたね。
とら君は がんばったものね。
そして これからは とら君の言ったことばで 相手の人がどんな気持ちになるか 思いやるってことも ママと一緒にがんばっていこうね。
ダメなママだけど とら君のためにがんばるからね。
いつも とら君のことを考えているからね。
最後に とら君 おとうちゃんと ママのところに産まれてきてくれてありがとう。
とら君は おとうちゃんとママのたからものです。」
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