12      床屋さん 放浪記
これは 私がHPを持つ前のウェッブ日記のとき 書いたものです。
床屋さんへ 子供さんを連れて行くときの参考になればと思い 転載しました。
 
2002/04/25 「ねこのあしあと」 より
 
みけ君の髪が だいぶ伸びてきました。床屋さんに行かねば。
みけ君は 髪が多くて硬いので とら君と同じ日に行っても とら君は和ねこのままなのに
みけ君は アンゴラねこになっちゃうんです。
めんどくさいから ふたり一緒に連れて行きますが。
 
そんなみけ君ですが 生まれたときは いまどきのあかちゃんに珍しく全然毛が無かったんです。だから 3歳くらいまで みけ君は 床屋は必要ありませんでした。
 
とら君は…一歳くらいから床屋さん行ったと思うけど 最初の居住地でとら君の床屋さんで苦労した覚えがないのですよね。
お姑さんから「あかちゃんは 床屋さんを嫌がるものだから 床屋さんに料金より少し多めに心づけを渡しなさい」とアドバイスされて その通りにしていたのは覚えていますが。
それと 私のどの弟だったか 床屋さんで顔剃り中に動いて 目の上切っちゃったことあったので もしかしたら「顔剃り 結構です」と言っていたのかもしれませんね。
それに 自閉症の子は あかちゃんの頃は手のかからない子だったという話を良く聞くから とら君ねこをかぶっていたのかも。(笑)
 
次の居住地では 近所の床屋さんに行きました。
感じの良い若夫婦のお店。
この辺から 暗雲垂れ込めてきたような…
とら君が 床屋中に動くようになってきたのですよね。
ただ あの頃のとら君は 異常に味付け海苔が好きだったので(考えてみれば あの味付け海苔好きは 異常でした) 私が味付け海苔を次々手渡して それを食べてる間に 髪だけ切ってもらったと思います。
 
そして 問題の次の居住地。
とら君は 幼稚園の年中。みけ君の髪も生えそろい 初の床屋さん。
振り返れば この頃とら君は かわった幼稚園で辛い毎日をおくっていたようです。
毎日 けがをして帰ってきたし。
その幼稚園のことは いずれまた聞いてくださいね。
みけ君は 多動の悪魔の季節が始まっていました。
そんなときに 私は何も考えずに 近所のただ一番近いという理由だけで その流行ってる店に 混んでる時間に 子供たちを連れて行ってしまったのです。
あの頃子供たちは 病院でも大荒れでした。他人に触られたくないのです。
この他人には 親も入ります。
「二度と来るな」といった医者。とら君に平手打ちをした医者。etc
話を床屋さんに戻すと 子供たちは床屋さんで泣いて叫んで大暴れでした。
なんとか髪を切ってもらったものの 他のお客さんが「こんなにガキが うるさくて待てるかっ」とか言って 帰ってしまったりして その床屋からは「他のお客の迷惑だから 二度と来ないでくれ」と言われてしまいました。
お恥ずかしい話ですが 私はあの時とら君を叩いてしまいました。
子供は叩くまいと決めていたのですが…
 
次の床屋は 懲りない私は 商店街の庶民的そうな従業員の多い店を選んでしまいました。
まったく 問題点が見えてなかったのですね。
椅子に座らされてぐずりだすとら君。もう海苔じゃごまかせないし。
そうだ。 隣が本屋さんだ。「この子 ドラ○もんが好きなので本買ってきます」
で とら君に本を渡したのですが 女性理容師が頭に触ろうとすると ぐずりだします。
前の床屋のような大暴れというほどではありませんが。
と そのオネエチャン かったるそうに
「あぁ だめですねぇ」
なんか その言い方にムカッと来た私は
「あなたがだめなら 他のできる人に代わってください」
そんなにきつい言い方したつもりはないのですが なんとそのオネエチャン泣き出しちゃったのです。たちまち 私に突き刺さる仲間の理容師たちの冷たい視線。
泣かないでよぉ。これくらいのことでぇ。泣きたいのは こっちだよぉ。
結局店長さんらしいおじいさんが とら君とみけ君をなだめながら髪を切ってくれました。
ほっとしてお礼を言いながら いつものように料金プラス心づけを渡そうとしたら 店長の奥さんらしい人が「結構です。規定料金以外いただきません」
そのきっぱりした冷たい言い方。
「二度と来るな」といわれたのと同じことでした。
 
3軒目の店をどうして見つけたのか 記憶にないのです。
家からも 車で行かなきゃ行けない場所だし。ねこの直感かしら。
この3軒目が若いお兄さんだったのですが ヒットだったのです。
子供好きで心のやさしい人みたいで ぐずったり動いたりする子供たちを あやしながら根気良く時間をかけて切ってくれるのです。
根気良くなれるのも いつ行っても他にお客がいないということもあったのでしょうけど。
この頃には 他のお客がいないほうが 子供たちにとってもお店にとっても良いことなんだとようやく私にもわかりました。
でも なぜお客がいないのか。
このお兄さん 良い人なんだけど 幼稚園児の頭を後と横を刈りあげて 上を立たせる。
このスタイルどこかで見たと思ったら アーノルド・シュワルツネッガー!!
そう お兄さんは アーティストだったのです。(笑)
でも こざっぱりすれば良いし 気持ちよくやってくれるし シュワちゃんでも良いわと思っていたら お兄さん お店を閉めてパリに修行に行くと言い出したのです。パリだよ パリ。
どのくらいの期間ですかと聞いたら 修行に6ヶ月 そのあとお店を改装するのに2ヶ月。
8ヶ月も お兄さんの帰り待てない…
で またジプシー。
 
4軒目は いつも私が買い物で通る道沿いでした。
ふと気がつけば お店の作りが床屋さんのよう。でも看板もないし 電話帳にも載っていない。
でも もしかしたら…と思って 入ってみたら奥からおじいちゃんが 出てきて引き受けてくれたのですが このおじいちゃんがなんと隠れた名人だったのです。
とら君 みけ君の つむじに親指当てたら 動くどころか 声一つ上げない。
必殺仕事人!!! あとでお話うかがったら 心臓が悪いので お仕事セーブしていて 本当は昔からの顔なじみのごく限られた人しかしないのだけど お店に入ってきたときの私があまりに思いつめた顔をしていたので…とのことでした。
 
この頃になると 私も 子供たちが暴れるのは お店のざわざわした雰囲気が嫌だとかコイツ気に食わないとか(笑)ちゃんと子供たちなりの理由があるんだなとわかりました。
私は おじいちゃんの長寿と健康を心から祈りました。
 
そして 引っ越し。
私もお店探しのポイントがわかったし 幸運なことに家の近所に私の求めるさびれて流行っていない(失礼)お店を発見。
このころは ふたりともだいぶ落ち着いて 少し体を動かすくらいになっていましたけど
顔剃りと髪洗いはパス。で 規定料金と心づけはちょっと痛かったです。
巷では 小学生500円なんて床屋さんもありましたから。
でも ジプシーはもう嫌でした。
この頃とら君が書いた作文に 床屋さんで切った毛が首についてちくちくして嫌だったと言う一文がありました。
こういう子たちが 床屋さん嫌がる理由はそんなとこにもあるのかもしれません。
タオルをきつく巻いてもらうとか髪をまめに払ってもらうとかしたら良いかも。
ここで 何事も無く3年。
 
そして 次の居住地へ。
私好みの床屋さんは バスで行くほどではないが 歩いていくにはちと遠い。
でも がんばって行きました。
最初 子供たち見た床屋さんに断られそうになったのですけど 「暴れたらすぐやめてくださって良いです。顔剃りも髪洗いもいりません。規定料金払います」と言ったら 引き受けてくれました。
 
ここには5年通いましたが 3年目くらいに奥さんが 「おとなしくしてるから 顔剃りしてみようか」と言い出されて あやしながら(と言ってもふたりともずいぶん大きいですが)顔剃りしてくれたのです。
そうしたら くすぐたっがってくすくす笑って顔をちょっと動かすくらいでちゃんと顔剃りできました。おお 大きな一歩。
ここでは 素晴らしいもの見かけました。 手動式のバリカン。
うちの子達は バリカンの音は平気みたいですが 音が嫌というお子さんなら 手動式のバリカンないか聞いてみたらいかがでしょうか。
 
で また引っ越し。
今度の居住地は とら君が小さい頃お世話になった感じの良い若夫婦のお店のあるところだったのです。
感じの良い若夫婦は 気難しい中年おっさんと陽気なおばさんになっていました。
もちろん あちらはこっちを覚えていません。
おっさんが 髪を切って おばさんが顔剃り そして「さぁ髪を洗いましょうね」
あっ 髪洗いは良いですと言いかけて いや嫌がったらその時点でやめれば良いんだ 家だったら何年も前から自分で髪洗ってるし。(小さい頃は 家での洗髪も 悲鳴をあげて大暴れ。今だったら 絶対あの悲鳴が 幼児虐待の疑いで通報されてます)
もちろん 髪洗いもおとなしくできました。フルコースつつがなくできたんです。
ジプシーが ついにここまでたどり着いた…大げさではなくジーンとしてしまいました。
でも 何度か通ううち 新たな野望がメラメラと。
ここは 本当に良い奥さんだから 事前に「今日行かせますから」と頼んでおいて お財布にお金入れさせて 子供たちだけで床屋行ける練習できるのじゃないかしら。
そうだ 今度から 頼んでみようと思ったら…また引っ越し。(いい加減にしろと思うよね)
んで 今日は新しい床屋さんに初お目見え。
もちろん 私がついていきます。
さぁ どうなることやら。
 
ここまで読まれて 「どうしてそこまで床屋さんにこだわるの?おかあさんが切ってあげれば」って思うよね。療育の先生にもそう言われて ス○カルだっけ買って来て挑戦したけど 私つくづく不器用なのね。
とんでもないことになってしまって 「二度と来るな」と言った床屋に文字通り泣きついて なんとか見られる髪にしてもらったの。汗
療育仲間のおかあさんには 「うちの子床屋だめだけど 私も不器用だから」って すっぱり思い切って マル○メ君にしている人もいました。
でも この時代にマル○メ君って 一種の「勇気」だと思います。
私は 子供たちにあまり周りとかけ離れた格好させたくなかったんです。
いまでも そう思っています。
(ただし うちはたまたま息子ですが 娘だったとして あのガングロ パンツ見えそうなスカート ルーズソックスetcはさせたいとは思わないでしょう)
 
「それは 子供のためじゃなく親のエゴでは」と言われると エゴと言うか親の夢と言うか希望と言うか それと子供のためがうまく融和できる部分を発見できたら…と思うのですが。
 
さて 今日もみけ君は 無事バス停まで来れるでしょうか。
 
今日も退屈な思い出話にお付き合いくださいまして ありがとうございました。
 
                 2002.04.25
 
 
 
 
 
更新日時:
2002/10/03
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Last updated: 05/05/07

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