10      とら君の幼稚園選びの失敗 5
 
M幼稚園の クリスマス会は 市民会館を
借りてします。
ただ ここが M幼稚園の おもしろいところですが 子供たちを 「差別」しないために 劇も衣装はなく お面だけ。
「さるかに合戦」でも さるの役 5人 かにの役 5人と言う風でした。
とら君は さるの役でした。
 
とら君は とら君なりに さるの役を楽しみにしているようで 押入れの上の段にあがって カキを投げるまねをしたりしていました。
私も 衣装はないけど さるの役なんだからと 茶色のハイソックスを 買ってきて楽しみにしていました。
とら君は 運動会はだめだったけど 前の
N幼稚園で 劇のせりふはちゃんと言えたから 今度もと 思っていたのです。
 
そして 当日 座席に座って楽しみに待っていた私の前で 「さるかに合戦」の幕が あがりました。
ところが さるの役の中に とら君はいないのです。
「あらっ 私の記憶違いかしら」
舞台の上の 他の役の子たちを 一人一人確認。
でも とら君は いません。
「なにか あったのかしら。 さっき S先生に連れられて おとなしく楽屋の方へ 行ったのに…」
私は とるものもとりあえず 楽屋へ行きました。
 
すると お世話係りのおかあさんたちに 取り囲まれるようにして 不安そうにとら君が 立っていました。
私が 入って行くと 気まずそうに目をそらす おかあさんたち。
「どうして この子は ここにいるのですか?」
ひとりのおかあさんが 言いにくそうに
「私たちは 園長先生のおいいつけどうりにしただけなので…」
「じゃ 園長先生か S先生を呼んでください」
探しに行ったおかあさんは 戻ってくると
「おふたりとも 今 忙しくて 手が離せないそうです」
私は とら君の 手をひいて 後ろも見ずに 楽屋をあとにしました。
 
その日の夕方 園長から 電話がありました。
「どうして 今日 なにも言わずに とら君連れて 帰ってしまわれたのかしら」
私は つとめて落ち着こうと思いながら たずねました。
「どうして 今日 劇に出していただけなかったのですか」
そうしたら 園長 おっしゃいましたね。
「あらぁ あんな子 人前に出して 恥かきたかったの」
「私は 私は 恥とは 思っていませんっ」
「あのね あなたが どう 思われようと あの子を人前に出すのは 恥よ。
私は 『教育者』として あなたにそんな恥をかかせるわけには いかなかったの。
でも お電話じゃ お互いの気持ちが うまく伝わらないわね。 明日 あさっては 休園だから 明後日 園の方へいらっしゃいよ。 ゆっくり お話しましょ。お互い 子供を思う気持ちは 一緒ですもの。きっと わかりあえるわ」
 
明後日 園へ行ったかですか。
行きましたよ。
退園届け持って。
そして 園長には会わずに なんだかんだ
言って引きとめようとする 副園長に 退園届け渡して 帰って来ました。
 
この園長と 話し合うことなんか まったくありません。
                  2002.09.08
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
更新日時:
2002/09/28
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Last updated: 05/05/07

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