不肖の娘
2005/1/29 「あしあと日記」より
 
あたしが
まだ 若い娘だった頃
 
あたしの父は 
会社から帰宅すると
まず お風呂。
 
お風呂の中で
調子っぱずれの歌を
朗々と 歌い
 
そして 湯上りのビール。
 
これが
無口で 真面目で 几帳面で
誰にでも 優しく 心配りをし
自分は 愚痴も弱音も吐かない父の
唯一の ストレス解消法
のようでした。
 
父がお風呂で歌う歌は
いつも 同じ歌でした。
 
途切れ途切れに
聞こえてくるのは
 
「マイ マザー」とか
「プリティ」とか「リッチ」とか
そして 最後に
ひときわ声を張り上げて
 
「ケ セラ セラァ〜♪
なるように なるぅ〜♪
先のことなどぉ〜♪
わからなぁい〜♪」
 
ある日 父が
あたしに この歌詞を
説明してくれました。
こんな 内容でした。
 
「昔 私が
若い娘だった頃
お母さんに ききました。
 
『美しくなれるでしょうか?
お金持ちになれるでしょうか?』
 
お母さんは 答えました。
 
『ケ セラ セラ
なるようになる。
先のことなど わからない』」
 
 
父は 一日の仕事の疲れと
心に溜まったストレスを
お風呂で 癒しながら
何を 想って
この歌を歌っていたのか。
 
父に 尋ねてみたいけど
父が 亡くなって
もう 12年になります。
 
多分 父のことだから
この歌で
自分の力では
どうしようもない何かを
振り捨て
次への活力にするために
歌っていたと思うんだけど。
 
 
ちなみに
あたしは 父の
不肖の娘です。
 
おしゃべりで 不真面目で 
だらしなくて
底意地悪く 批判的で
愚痴も弱音も言いたい放題。
 
お風呂も カラスの行水だし。
 
なにより かにより
アルコールは
奈良漬で 酔っ払ったことが
あるほどの 下戸です。
 
でも なにより
あたしは 
「不肖の娘」だなぁ
と 父に申し訳なく
思うのは…
 
「ケ セラ セラ
なるようになるさ」
という言葉が
 
今のあたしには
 
「がんばっても
がんばっても
なるようにしか
ならないんだね」
 
という風にしか
思えないこと
 
なんだよなぁ。
 
 
更新日時:
2005/02/18

PAST INDEX NEXT



Last updated: 07/08/11

mieneko@myad.jpメールはこちらまで。