戦争中の子ども
今 世界のあちこちで 戦争をしている国があり そのため 多くの尊い人命が失われていること。 
戦争のための武器を研究・開発したり 蓄えたりしている国があるということ。
それらを 哀しく やりきれない思いで見つめながら 
父のこんな話しを思い出しました。
 
 
私の父は ビールが大好きでした。
夏でも 冬でも 湯上りの晩酌はビール。
そのビールをおいしく呑むため 昼食後は
お茶も飲まず 会社から帰宅すると まず
お風呂。
 
お風呂場から ふぅと大きなため息が聞こえてきます。
それを聞きながら 冷蔵庫からビールを出し 父が真っ赤になったつやつやの顔を タオルで拭き拭き台所に入ってくると ポンッとビールの栓を抜く。
それが 子どものころからの 私の役目でした。
 
父は トクトクトクと グラスに ビールをついで ぐぐぅと
一呑み。
ぷはぁと息を吐いて 至福の表情。
それが 父の日課であり とても人に気を遣う父が 
心の疲れを吐き出す瞬間だったのでしょう。
 
そんな父ですが 一緒にデパートの地下の
食品売り場を歩いている時 ふと足を止めることがありました。
視線の先を見ると チョコレートの箱詰めを 見ています。
 
それが 何度となくありました。
はてな?
父はビールは大好きだけど チョコは 食べているのを見たことはないけどなぁ。
それに 食べたければ スーパーマーケットにだって いくらでもチョコ売ってるのに。
 
それで 父にきいてみました。
「パパ チョコレート食べたいの?」
「食べたいというのもあるけど。
なんて 綺麗なんだろうと思ってね。
パパの子どものころは こんな綺麗なものはなかったからね。
つい 見てしまうんだよ」
 
父は 昭和の始めに生まれました。
戦争中は まだ子どもでしたから 兵隊として 戦場に行ったことはありません。
でも 親戚には戦死した人 被爆して亡くなった人が 
おります。
 
父の兄や姉は 学校の勉強そっちのけで
工場で働いていたそうです。
 
でも これらの話しを 父も叔父や叔母も
積極的に語ってくれたことはありません。
暗い重い思い出ほど 口に出すのはためらわれるものなのでしょうか。
 
ですが 父がポロリと漏らした 箱詰めチョコレートへの憧れは 父の子ども時代の 戦争の 暗さ 悲しさを 私の心に伝えてくれました。
 
育ち盛りの子どもの口から甘いものを奪い
子どもたちの いや すべての人の目から
美しいものを奪う それが 戦争ではないのでしょうか。
 
戦場で戦う人たちは 命を奪われ
兵隊として出兵した人の家族は 心の平安を奪われ 
一部の人は兵士になれないということで 人権を侵害される。 
それが 戦争ではないのでしょうか。
 
この国の人は それらを 心に刻んでいるはずなのに 
なぜ また 同じ過ちの道を選択しようとするのでしょう。
 
私には 難しいことは わかりません。
ただ 戦争は 悲劇しか生みません。
それだけは わかります。
 
今 街を彩る 美しいクリスマスイルミネーション。
これらを 美しいままに 子どもたちに 残してあげるために 私たちは 何をしたらいいのか 真剣に考える時でないでしょうか。
 
 
 
更新日時:
2003/12/04

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Last updated: 07/08/11

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