Last updated: 07/06/18


14    『「障害児なんだうちの子」って言えたおやじたち』  町田おやじの会著  ぶどう社
H16年4月13日(火)
 
懇談会とかPТAの集まりとかがあったとき 大勢の「お母さん」たちに混じって 
2.3人の「お父さん」の姿を見ることがあります。
 
「お母さんたち」が それこそ かしましくしゃべっている中で 
「お父さん」たちは お互いが お互いの存在をまるでないもののごとく 
視線すら交わそうとせず ひたすら前を向いて じぃぃと固まって
座っておられます。
 
どうも 「お父さん」というのは 仕事の場は別として 
初対面の人と お話しするのが苦手なようですね。
 
ましてや 我が子がしょうがい児だということや
しょうがいを宣告されたときの衝撃や
その後の苦悩を 語るなんて 
「お父さん」には どれほど大変なことかと 想像いたします。
 
屈託なくよくしゃべる「お母さん」だって 
ひとたび「しょうがい児の母」となれば 
「泣いちゃいけません。
愚痴をこぼしちゃいけません。
いつも 太陽のように 明るくしていなさい」
なんて 無理難題をおっつけられることが
ままあるんですもの。
 
ましてや 「お父さん」は 男です。
「男が 泣き言 言うなんて 恥」と 
教えられて 大人になったのでしょうし。
 
だから 「お父さん」は 愚痴れない。
自分の 想いを語れない。
「お父さん」は 貝のように沈黙してしまう。
 
そんな 「お父さん」を 見て 
「お母さん」は 
「あの人 我が子のこと なんにも 考えていないんだわ」 
と 思ってしまう。
 
はい 私も そう思っていました。
と いうか 今でも 思うときもありますけどね。
 
でも インターネットを始めたおかげで 
いくつかの「お父さん」 の サイトを拝見して 
「そうか。お父さんも つらいんだ。
苦しいんだ」
と 目からうろこが ぽろりとなったしだいです。 
 
そして 更に 耳より情報が。
貝のように沈黙する「お父さん」の 口を
ぱっくり開かせる魔法の薬があるらしい。
 
その魔法の薬の名は 
「気のおけない仲間と呑むお酒」
 
「なるほど そうか」
と 深くうなずいたものの
私は アルコールを一滴も受け付けない体質ですし。
例え 呑めたところで 「お母さん」は 「お母さん」同士だから 
話せる話しがあるように 
「お父さん」も 「お父さん」 同士だからこそ 
気のおけないお酒になるんでしょう。
 
ううん やっぱり
「お父さん」たちの 本当の気持ちを知るのは
無理なのかしら。
 
と 半ばあきらめかけていたところに
出版されたのが この
『「障害児なんだうちの子」って言えたおやじたち』
です。
 
しょうがい児の「お父さん」たちが それぞれの想いを 
それぞれの言葉で語っておられる本です。
 
ぜひ 「お父さん」にも 「お母さん」にも 
先生にも 学生さんにも ぜひ 読んでみていただきたいです。
 
ただ 読んでみていただきたいとお薦めしておきながら 
実は 私 不安もおぼえております。
 
と 言いますのも。
読まれたのが 「お母さん」 だったとき。
 
どうも 「お母さん」たちは 生真面目な方が 多いようで。
その 生真面目さゆえに この本を 読み終わったとたん 
猛然と 「お父さん」に この本を 突きつけて
 
「世の中には こんなに 子育てを こんなにがんばっている『お父さん』も いるのよ。
あなたも 見習いなさいよ」 
なんて 言うんじゃないかと。
 
いや そう言いたくなる 「お母さん」の気持ちは良くわかります。
私も 読み終わったとたん そうしたくなったもの (笑)
 
でも しばしお待ちを。
そんなことをしたら 「お父さん」を ますます 沈黙の中に
追いやる結果になるのではないかしら と 思います。
 
だって もし 逆に 「お父さん」から
がんばってる「お母さん」の本を 差し出されて
「この本を読んで 君も見習ったら」
なんて言われて 素直にうなづける「お母さん」なんて 
そんなにいないと思うんですよね。
それと おんなじ。
 
だから この本を 読んだのが 
もし 「お母さん」なら 読み終わった本を とりあえず 本箱にしまっておいて。
 
「お父さん」に
「この人 我が子のしょうがいを なんとも感じていないんじゃないかしら」
と 思える言動があったとき この本の内容を 思い出してみたらどうでしょう。
 
そうしたら 我慢するというのじゃ 決してないけど 
「お母さん」の 気持ちも 以前ほどは 荒涼としたものにはならないような
気がするのですよね。
 
それと 同時に
「最近 女房は ずいぶん 父親の気持ちに 理解が あるようになったなぁ」
と 思った「お父さん」が 偶然本箱で この本を発見する。 
 
あるいは 「お父さん」が そういう疑問を口にしたとき
「この本のおかげなのよ」
と 薦めてみる というのは どうでしょうね。
 
そうすれば 「お父さん」も 素直な気持ちで この本を読める 
そんな気がするのです。
 
なんて 余計なおせっかい焼きたくなるのも この本は とてもいい本なのに
「夫婦喧嘩」の元になるなんて もったいなぁいという思いもありますけど。 
 
「お父さん」も 我が子を愛して 一生懸命がんばっているのに。
「お母さん」も 我が子を愛して 一生懸命がんばっているのに。
 
だけど お互いの そのがんばりや 一生懸命さが
ボタンの賭け違いみたいになっちゃって 
「お父さん」と「お母さん」の 気持ちが とげとげしくなっちゃったとき 
一番 傷つき 悲しい思いをするのは 
愛する子どもたちなんですもの。
 
 
 
 



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