Last updated: 07/06/18


13    料理で読むミステリー  貝谷郁子著   生活人新書
H15年10月24日(金)
 
私の二大好きなこと。
本を読むことと 食べること。
でも これを同時にするのは 好きじゃない。
ものを食べながら 本を読む。
食べ物にも 本にも失礼なような気がしてね。
 
小さいころ 読んだ本で 特に印象に残っているシーンのいくつかは
食べ物にまつわる描写。
特に 時代や当時の私の生活環境からの 滑稽な誤解の数々。
 
ケストナーの 「二人のロッテ」
入れ替わりがばれないために 大嫌いなオムレツを5個食べる主人公。
でも 当時の私は オムレツって知らなかったのです。
私が 知っていたのは ケチャップライスのつまったオムライス。
「あれを 5個も! 外国の女の子はなんて 大食いなんでしょう」
と 子どもの私は 目を丸くしたものでした。
 
スティーブンソンの「宝島」
海賊のセリフ 「おれは 卵つきベーコンさえあれば それでいい」
今は わかります ベーコンエッグのことね。
でも その時は ベーコンといえば 鯨のベーコンしか知らなかったものですから。
逆に 今の若い人は 鯨のベーコンをご存じないかしら。
 
モンゴメリの「赤毛のアン」
アンの焼いたソーダ入りビスケットは 真っ白にふっくら焼きあがった。
クリームソーダをなぜ ビスケットに入れるの?
緑じゃなく 白く焼けるの?
???
 
ベルテ・ブラットの「アンネは美しく」
チーズを乗せて焼いたパンに ビールをかける。
気持悪そう…
これも 後年判明しました。
イギリス料理 ウェルシュ・レアビットのことと思われます。
 
今みたいに 外国の食べ物の情報がほとんどない時代のことですから
訳者も 苦慮されたことでしょう。
 
高校生くらいの時 読んだ
松本清張 「砂の器」
重いテーマも もちろんですが
特に印象に残っているのは3つ。
 
出雲地方に 東北弁とよく似た言葉をしゃべるところがあるという
こと。
 
犯人を愛する女が 証拠隠滅のため シャツを細切れにして
夜汽車の窓から ばらまくシーン。
ひらひらと風に舞い 闇に吸い込まれていく小さな布キレたち。
夜汽車の響き 窓から吹き込む風 闇と布の黒と白の
鮮やかなコントラスト。
 
そして その犯人を追う刑事が 疲れて帰宅し
ひとりで遅い夕食をとるシーン。
冷たいご飯に冷たい大根の煮つけを乗せて(電子レンジの無い時代ね)
熱いお茶をかけてかきこむ。
口の中に広がる しゃくしゃくとした咀嚼感。
ご飯と大根の冷たさとお茶の熱さ。
 
本と言うものは 目で文字を追うだけじゃない。
五感を駆使して読むものなんだと思いました。
 
だから 風景の描写はもちろんですけど
食べ物について 詳しく述べられている本は
とても好きです。
 
特に 最近では ダイアン・モット・デ−ヴットソンの
クッキングママシリーズ。
これは 主人公のゴルディが ケータリングの仕事をしつつ
一人息子のアーチを育てつつ 離婚した暴力前夫と攻防戦を繰り広げつつ
新しい恋を育み再婚し そして なぜかいつも殺人事件に巻き込まれて
探偵役として 謎の解明と犯人探しをするという 大変楽しいシリーズです。
そして なにより嬉しいのは ゴルディの作る料理が
レシピとして紹介されているのです。
私も この本のおかげで いくつか 料理のレパートリーを増やしました。
 
で ようやく 今回 紹介したい「料理で読むミステリー」
これはもう 食べるのが好きで 料理が好きで
ミステリーが 好きな私には たまりません。
例えば こんな感じ。
 
1 料理好きの探偵たち
01 探偵界一の料理人の松の実ライス
ロバート・B・パーカー 「探偵スペンサーシリーズ」
「初秋」
作った人: スペンサー
食べた人: スペンサーとポール(依頼人の息子)
 
そして 貝谷郁子さんの スペンサーシリーズや
松の実ライスにまつわるエッセイが書かれ
そして それに続いて 松の実ライスのレシピと
「探偵スペンサーシリーズ」の紹介です。
 
こういう風に
2 食べながら探偵
3 料理は元気の元
4 料理はダメ
5 至福の外食
6 幻の料理
の各章で おいしい料理とステキな探偵たちが
紹介されていくのです。
 
V・I・ウォッシャスキー ケイ・スカーペッタ
キンジー・ミルホーン ギデオン・オリバー
フロスト警部などなど
 
まさにミステリー好きには 垂涎の的の
この豪華メンバーたち。
彼は 彼女は 何を作り 誰と食べたのでしょう。
そして その作り方は。
 
読み終わったあと 猛然と料理がしたくなり
まだ見ぬ探偵との出会いを求めて
書店に走りたくなるこの本は
まさに 食欲の秋 読書の秋にぴったりの1冊といえましょう。
 
ささ どうぞ どうぞ 召し上がれ。
 
 



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