Last updated: 07/06/18


6    ぼくは うみが みたくなりました  山下久仁明著  ぶどう社
H14年11月23日(土)
 
これは 「ステキ」な 小説です。
 
看護学生明日美は 少し年下に見える少年と出会い 彼を海に誘います。
ところが 彼は 道中一言も口をきいてくれず 不思議な行動もする。
彼をドライブに誘ったことを 後悔し始めた明日美の前に現れた感じのいい老夫婦。
明日美は この老夫婦をも含めた4人で 一泊二日の小旅行をすることになるのですが その旅の中で 明日美は知っていきます。
その不思議な少年淳一が 「自閉症」であるということ 自閉症とは どんなものであるかということを。
 
最初にも書きましたけど 本当にステキでさわやかな小説です。
自閉症と言う重いテーマをあつかっていますが 明日美の車のグリーン 全体に漂う
「海の青と潮騒」 車を走らせるとき感じる風の爽快感。
 
登場人物も みんな魅力的です。
明日美は 看護学生ですけど 自閉症についてほとんど何も知りません。
そんな明日美に 自閉症や自閉症児について 穏やかにわかりやすくエピソードを
交えながら話してくれる老夫婦。
強くてかしこい淳一の母 瑞江。
自閉症の兄をクールでドライでそして暖かく見る弟健二。
 
そして 二度目に読んだとき思ったのですけど これらの登場人物は みんな「傷」を
持った人だと。
明日美は 失恋の心の傷。
老夫婦の夫は 死病を乗り越えた体の術後の傷を 妻はその夫を平静を装いながら内心はらはらして見守っている。
淳一の自閉症がわかったとき泣いてばかりいた瑞江は16年たって泣かなくなったけど でもついつぶやいてしまう。「自閉症かぁ」と。
兄のことを愛しながら兄のしょうがいで 将来の選択肢を絞られたくなくて ガールフレンドともけんかしてしまう健二。
 
では 主人公淳一の思いは…というと
これは 淳一のモノローグと言う形で 語られます。
例えば 
「ぼくの名前はあさのじゅんいちです。
ぼくはおしゃべりがにがてです」
というふうに。
私は この小説を読んでいるうちに 淳一君のモノローグが うちの息子たちの声と重なり 私が一番知りたいこと 息子たちは 自閉症の人の独特の世界のなかで
なにを思っているのかを 少し知ることができたような気がしました。
読了後は 思わず涙ぐんでしまいましたが
それは悲しい涙ではなく 嬉しい涙でした。
 
この小説は 自閉症の人の家族のかたが
読めば 「ああ そうそう」とか 「大きくなったら こんな風になるのか」というふうに読めますし 自閉症を知らない人には 自閉症を知る手引きとしても 読んでいただきたいです。
 
 
 
アナママさんが 「ぼくは うみが みたくなりました」 応援サイトをつくられました。
ぜひ このサイトにも 行ってみてください。
http://ktplan.net/anamama/
です。



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