23      とら君のプライド
昔の日記を 読み返していたら おもしろい日記を 見つけました。
「おもしろい」というのは 笑えるという意味と興味深いという意味の両方です。
 
今から 約2年前の出来事だから 
当時 とら君は 養護学校の高等部2年生
みけ君は 地元の中学校の情緒障害児学級の3年生の時のことですね。
 
 
2003/9/26 「あしあと日記」より
 
明暗
 
 
とら君は 毎朝 同じテレビ番組を見ます。
そして 決まった時間になると 自分でテレビを消して
「いってきます」
と言って カバンを持って 登校していくのですが。
 
昨日 いつものように テレビを見ているとら君。
私は 隣の部屋で用事をしていました。
 
すると とら君が テレビを消しました。
そして そのまま 無言で 部屋を出て行きました。
 
(・_・?) ン?
慌てて 追いかけて 玄関のところで
とら君の顔を見たら メガネをかけていません。
 
「とら君 メガネは どうしたの?」
「………」
「壊れたの?」
「……はい…」
 
「メガネはどこにあるの?」
 
とら君は こねこ部屋から メガネケースを持ってきました。
開けてみると メガネのレンズとレンズを
つないでいる部分が ぽきりと折れています。
 
あちゃ。
だけど とら君が暴れていた様子もないから
これは 金属疲労ってやつで 自然に 折れちゃったのかな。
7年ぐらい使っているもんね。
 
「はい。わかりました。
じゃ これは ママが
メガネ屋さんになおしてもらうからね」
 
「…はい」
 
「でもね。とら君
メガネが 壊れたら 『壊れたよ』って教えてね」
 
と とら君は
「僕を守ってくれるのは みけ君ですよ」
 
これはですね。
とら君が 自分が窮地に立たされたと感じたとき 
場面に関係なく出てくる言葉です。
パニックの一種ですかね。
 
「とら君 ママは 
怒ってるんじゃないからね。
ただ 教えてほしいだけよ。
さぁ いってらっしゃい」
 
「…いってきます」
 
だけど とら君を追い詰めるような きついもの言いも
顔もしていないつもりなんだけどなぁ。
α~ (‐.‐")ふぅ
 
んで とら君の担任の先生に電話して
メガネが壊れたことと
とら君が精神的に不安定になっていることを
ご連絡しておきました。
 
それから みけ君の文化祭に行って
帰りに メガネ屋さんに寄って
とら君の壊れた眼鏡を見せて
同じフレームを取り寄せてもらうことにして 帰宅。
 
学校から帰ってきたとら君は
特にいつもとかわった様子もありません。
 
担任の先生のお話しでも
クラスメートに
「あれ?メガネは?」
と きかれた時は
ちょっと困った顔をしたけど
先生にもフォローしていただけて
そのあとは 落ち着いてすごせたとのこと。
 
そして みけ君も帰宅し
おとうちゃんも帰宅し
秋刀魚をおかずに夕ご飯。
 
おとうちゃんが
「どうして とら君は
メガネをかけていないんだ?」
と言ったので
「うん メガネ壊れちゃってね。
同じフレーム取り寄せるのに
二日かかるの」
と 説明して。
 
それから
「そうそう。
今日は みけ君は
文化祭で すごくがんばったんだよ」
と みけ君の文化祭での様子を 話しました。
 
そうしたら とら君が
「僕とみけ君は 今日明暗を 分けましたよ」
と言ったのです。
 
(・ ・)えっ?
なんだろ 「明暗を分ける」って。
 
「とら君
どっちが 明で どっちが 暗なの?」
 
「ぼくは暗で みけ君が明ですよ」
 
「どうして?」
 
「ぼくは メガネを壊しましたよ。
みけ君は 文化祭で太鼓をがんばりましたよ」
 
「メガネは 壊したんじゃなくて
自然に壊れたんだから 
とら君のせいじゃないよ」
 
「ぼくは メガネを壊したことにより
高校生としての自信を失いましたよ。」
 
「とら君 
メガネは 長いこと使っているから
金属疲労というので 自然に壊れたんだよ。
とら君が 自信を失うことはないよ」
 
「…はい…」
 
でも しばらくして
とら君が
「メイとアンですよ」
 
゛(・・ ンッ?
メイとアン?
そんな名前の タレントかなんかいたっけ?
 
「とら君 誰?
メイとアンって?」
 
「僕がアンで みけ君がメイですよ」
 
ああ 明と暗ね。
さっきの続きかぁ。
とら君 結構しつこいね。
つうか 3分前の話題を
忘れているアタシのほうが
ど〜よかぁ。
f(^^;) ポリポリ
 
「ぼくと裏腹に みけ君は
文化祭で 脚光を浴びましたよ」
 
「とら君だって 体育祭で
応援団長で 脚光を浴びたじゃない」
 
「でも 準優勝でしたよ…」
 
「でも 白組は準優勝だったけど
とらくんは 精一杯がんばったんだから
いいんだよ」
 
「…はい…」
 
だけど そのあと とら君は
ポツリと
 
「秋刀魚の中
苦いですよ…」
 
!Σ( ̄□ ̄;)
とら君が 食べ物の味について
なんか言うなんて
本当にないことだし…
 
苦いのは とら君の心のうちかな…
 
運動会のことや
メガネが壊れたこと
そんなに気にしていたんか…
 
なんて ガラス細工のように
繊細なお子やろね。
 
私のように ドニブイもんのところに
こんな繊細で傷つきやすい心を持った子たちを お授けになるなんて
 
カミサマ 
(・_・)σアナタの 人選ミスね。
 
なんて 責任転嫁していても
しょうがないから。
 
これから 私も
話し方とか 話すタイミングを 気をつけなくちゃね。
 
___ψ(‥ ) カキカキ
( ・_・)ノノ"□"  メモハリツケ〜
 
だけどね。
運動会の準優勝といい
メガネが壊れたことといい
人間の努力じゃどうしようもないことだもんね。
 
いわば
「不可抗力」
 
こういうことは 
気にしても しようがないから
気にしないようにするしかないんだけどね。
 
とら君に それをどうやって
伝えたらいいもんか。
ウーム (; _ _ )/
 
新たなこねこたちのための
親と そして 先生にも
お願いしなくちゃいけない
課題だな。
 
秋刀魚のはらわたは
苦くて 私も嫌いだけど。
あれも 味のアクセントと思えばね。
 
こねこたちのための苦労も 
私の 人生の
アクセントだわ。
 
(→.←) ニガーイ
 
 
更新日時:
2005/05/07
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Last updated: 05/05/07

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